「ハワイの野鳥に魅せられて」崎津鮠太郎さんインタビュー

「ハワイで活躍する九州人」にスポットを当ててインタビューする本企画、今回は学生としてハワイに渡り、現在はホノルルでグラフィックデザインの仕事をしながらハワイでの暮らしを満喫している崎津鮠太郎さんをご紹介します。

熊本県出身の彼の今の生活の基盤となっているのが、野鳥。元々趣味で始めたという野鳥観察ですが、今では国内外の雑誌や本に写真が掲載されるまでに。

そんな崎津さんに、野鳥との出会いからハワイでのライフスタイルまでをインタビューしました!

 

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─ 崎津さんがハワイに住むことになったきっかけを教えてください。

崎津:10年以上前になりますが、語学留学で学生としてハワイにやってきたことがきっかけです。学生の頃からハワイが好きで気に入ってしまって「これは住みたい、帰りたくない」と思って、それから卒業しても日本に帰らず、ずっとこっちに住んでいます。ハワイの気候と文化が特に好きですね。

 

─ ハワイで生活している中での、野鳥との出会いはどんなものだったんですか?

崎津:“世界の渡り鳥を追いかける”という内容のドキュメンタリー映画をハワイの映画館で観てすごく感動して、すぐ本屋さんに行ってハワイの野鳥の図鑑を買ったんです。日本にいるときも自然は好きで、元々は川魚が好きだったんですが、野鳥っていうピンポイントになったのはその映画がきっかけですね。でもそのあとそんなにハマっているわけではなくて、たくさんある趣味の中の一つでした。そこからちょっとずつ、野鳥のことが好きになっていったっていう感じですね。

 

─ そこから野鳥の写真を撮影するまでに至るわけですが、最初に野鳥を撮影したきっかけは何だったんでしょうか?

崎津:ホノルルで、白い鳥が僕の上をホバリングしてたんですね。それで「可愛いな」と思って帰って家で調べたら、マヌオクー(シロアジサシ)という古代から人との繋がりが深いハワイの在来種の鳥だっていうことがわかって、またいるかもしれないと思ってカメラを持って行ったらそこにいたんです。そこで撮ったのが初めてですね、マヌオクーは僕が写真を撮るきっかけになった鳥です。
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2007年よりホノルル市公認の“市鳥”となった鳥、マヌオクー

 

─ 今現在はどんな場所に、どれぐらいのペースで撮影に行かれているんですか?

崎津:毎月、ハワイ島/マウイ島/カウアイ島の3つの島にローテーションで行っています。だいたい3連休があるときに行くか、またはバケーションを使っていく場合は長くても5日くらい滞在しますよ。

 

─ 撮影の流れを教えてください。

崎津:鳥やその種類にもよりますが、ハワイを代表する森の野鳥でハワイミツスイの場合は、オヒアレフアという花がたくさん咲いている場所をまず探します。それから写真を撮るのに良いライティングや背景が綺麗な位置をおさえます。そこで、鳥が花の蜜を吸いに来るのをひたすら待つ。

アニアニアウというカウアイ島にしかいないハワイミツスイは、蜜を吸ったあと30分後くらいに同じ花に必ず戻ってくるので、その瞬間がチャンスです。鳥によってこの場所のこの木にはこの鳥、というのがだいたい決まっているのでピンポイントにそこを狙うことができますが、もちろんずっとこないときもあるし、来る時は群れできたりもします。アマキヒという鳥はだいたい群れでやってくるので、来た時は大忙しですね。
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オヒアレフアの花とマウイ・アマキヒ

 

─ カメラの機材は野鳥用に用意されているんですか?

崎津:カメラ本体は同じですけどレンズは野鳥用の望遠レンズですね。あとは双眼鏡が必需品。山の中を長い時間ハイキングするのでコンパクトさを重視したものにしています。
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観察に使用している双眼鏡

 

─ ちなみに撮影には、何人くらいで行かれるんですか?

崎津:野鳥を観察するグループもあるんですが、僕は参加していないので基本的に一人で行っています。ひたすら待ちの時間が多いので、友達を連れていけないんですね。でも最近はSNSやWEBサイトに写真を載せられるし、いい写真が撮れたときの感動はネットで共有できるのでそれで満たしています。

 

─ 崎津さんが野鳥に惹かれる魅力とは何ですか?

崎津:ハワイはハワイミツスイという鳥の固有群が生物学的にも珍しくて、元々フィンチという鳥が大昔にハワイにたどり着いたのですが、そのたった一種から多くの種に分化し、環境に合わせてそれぞれ独自に進化していったのが、ハワイミツスイ類なんです。こういう現象を適応放散といいますが、ハワイミツスイ類の適応放散は世界的に見ても顕著な例で、とても珍しいこと。

オアフ島のコオラウ山脈にはトレイルがいくつもあって、ここに行くときの目当てはアマキヒアパパネというハワイミツスイです。ハワイで野鳥に興味を持つと、行き着くところはハワイミツスイだと思います。ハワイの真の宝ですよ。

もう一つの魅力としてはやっぱりどの野鳥も本当に美しくて、それぞれくちばしの色や形や長さ、羽根の色や形、大きさも全部違うところですね。そういった魅力に取り憑かれましたね。
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ハワイミツスイ類であるアパパネとイイヴィ

 

─ 崎津さんが1番好きな鳥を教えてください。

崎津:ハワイミツスイについて語ってきましたが、実は一番好きなのはエレパイオ(ハワイヒタキ)という鳥です(笑)。森の野鳥なんですけど、ヒタキの仲間で見た目はスズメみたいな感じで小さい茶色い鳥。オアフ島、カウアイ島、ハワイ島にしかいなくて、不思議なことにマウイ島には生息していないんです。それがそれぞれオアフ・エレパイオカウアイ・エレパイオハワイ・エレパイオという亜種で、姿、形もそれぞれ違います。でもオアフ・エレパイオは絶滅の危機に瀕しているのでなかなか出会えず、僕も2年に1回しか見ることができていません。尾羽を45度に立てて、人間を恐れず近づいてくるとても可愛い鳥です。

また、エレパイオはハワイでも昔から大切にされた鳥としてカヌーを作る人たちの守り神だったとも言われていて、カヌーを作る人たちがコアの木を探すときにエレパイオが木にとまったら「その木には虫がいっぱいいるから使わないように」と教えてくれている、というような言い伝えもあるみたいです。あともうひとつは、僕が写真を撮るきっかけとなったマヌオクーが好きですね。
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上からそれぞれオアフ島、カウアイ島、ハワイ島のエレパイオ

 

─ 観光客でも見ることができる野鳥はいますか?

崎津:はい。渡り鳥で、8月から4月までハワイで越冬するコーレア(ムナグロ)という鳥はゴルフ場や公園の芝生、パーキングロットでも見られますし、カピオラニパークに行ったらたくさんいますよ。チドリに似ていて、足が長くてテクテクテクテクテクって早く歩くんです。夏にアラスカやシベリアで繁殖したあと8月にハワイにやって来るんですが、姿を見ると「ああ、秋が来るなあ」と感じます。季節が春になるとともに体の色が茶色からだんだん黒になっていくので日本名では“ムナグロ”という名前なんですよ。黒くなっていくと今度は「ああ、春だなあ」と思いますね。

アラモアナビーチパークもオススメです。今の季節は渡り鳥も多くいて、海のほうに行けばアケケケ(キョウジョシギ)という渡り鳥や、川が流れているところにアウクウ(ゴイサギ)がじーっと魚を狙っている姿を見ることができますよ。その2つはカピオラニパークでは見れない鳥たちです。
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上の写真が秋のもので、下の写真は体の色が黒色に移り変わった春のコーレア

 

─ 今までに色々な媒体で崎津さんの写真が使われていますが、きっかけは何だったのでしょうか?

崎津:一番最初は、アメリカの場合はFlickr(写真共有サイト)に僕が投稿した写真を発見して連絡をとってきてくれる場合が多いですね。「写真を雑誌に使いたい」とメールで連絡がきます。Anuhea(Webサイト)のFacebookページがあって、日本の場合はそこからも連絡をもらいます。
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ハワイアン航空の機内誌「Hana Hou!」の表紙にも掲載されたイイヴィ。この写真は崎津さんのお気に入りのうちの1枚。

 

─ そんな野鳥に魅せられた崎津さんのライフスタイルを教えてほしいんですが、一週間の過ごし方は?

崎津:平日は、ヨガ三昧ですね。夜、ワイキキのスタジオでしています。週末は毎週、出られる時は野に山に撮影に出向いています。調子がいいときは朝6時頃起きて、会社に行く前にカピオラニパークに行くときもあります。

ライフスタイルといえば、野鳥を愛するあまりだんだんと他の動物も食べなくなり、いつのまにかベジタリアンになってしまいました。

 

─ ベジタリアンの食生活とはどんなものでしょうか?

崎津:基本的には穀物、野菜、果物、豆類、それから納豆や豆腐などですね、普通のベジタリアンです。それでも乳製品と卵を完全避けるのは難しいので、ちょっと口に入るのは仕方ないと思っていますけどね。この食生活になって痩せたりなどの変化はありません、大酒飲みなので健康ではないんです。(笑)

 

─ ちなみに崎津さんがハワイの中で九州や地元・熊本を感じられるところってありますか?

崎津:日系スーパーで味千ラーメンを売っているところ。見つけたとき、おお!と思ってびっくりしました。あとは、ハワイで出会う人の中で意外に熊本人が多いので、ハワイの人口を考えてみても熊本出身でハワイに住んでいる人ってとても多い気がします。

 

─ 今後の展開や、目標などがあれば教えてください。

崎津:写真も絵と同じで、「これが最高」というものはなく、よりよいものをずっと追い求めるものだと思います。今までに撮ってきた鳥の写真でも、より素敵な環境の中で、より美しい背景やより良い植物とのコンビネーションで撮影したいという気持ちがあるので、もっともっとたくさん写真を撮っていきたいと思っています。

 

─ ありがとうございました。それでは最後に、九州の人へ向けてメッセージを。

崎津:僕にとってハワイは第二の故郷です。ハワイに来たことのない人は、一度ハワイに遊びに来てほしいですね。できればありきたりの観光だけじゃなくて、ハワイの自然やフラなどの独特の文化に触れてもらえれば、ハワイの本当の素晴らしさがわかると思います。

 

 

崎津 鮠太郎(さきつ はやたろう)

熊本市出身。ハワイでグラフィックデザイナーとして働く傍ら、ハワイの野鳥観察&撮影にハマり、Webサイト「Anuhea」を制作。現在までに撮影した写真は国内外の様々な媒体に使用されており、ハワイの植物と野鳥のありのままの姿を美しく捉えた写真は必見。FMKラジオ「グローバルビート」(月〜木曜/AM9:30〜)に不定期で出演中。

 

Anuhea -ハワイの花・植物・野鳥図鑑-
http://www.anuhea.info/

Anuhea – Facebookページ
https://www.facebook.com/anuhea.hawaii

Flickr – Hayataro Sakitsu
http://www.flickr.com/photos/hayataro/

 

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